個体差を考慮できていますか?【骨盤編】
皆さまこんにちは、ヨガインストラクターのよがくらげ雅子です。
体には個性がある。これはもう紛れもない事実であり、インストラクターであれば個性を考慮したレッスンをもちろん気にかけていることと思います。
分かりやすいのは柔軟性でしょうか。
同じように前屈するにしても、ハムストリングスの柔軟性や股関節の可動域によって完成形は人それぞれ変わってきます。
そして柔軟性よりも視覚で認識しにくい感覚についても念頭においておく必要があります。例えば痛みに対しての感受性も人それぞれ違います。
痛みを強く感じる人とそうでない人では、柔軟性が同じであっても呼吸が深まるアーサナの強度はやはり変わってくるでしょう。
そういった複合的な様々な要因でアーサナの完成形は十人十色ですが、そのことを頭で理解していてもなかなか他人の体の条件を想像しきれないものですよね。
今回は、インストラクターとして知っておいた方が良い体の個性について、骨盤周辺の形状に特にフォーカスしてみましょう。
■アーサナの得手不得手に影響しやすい骨盤の条件
股関節の柔軟性や可動域が問われるアーサナはとても多いですが、一言に股関節の柔軟性と言っても色々あります。例えば縦に開脚する時と横開脚の時に必要な可動域は違いますし、横開脚ができるからと言って合蹠やあぐらの状態で骨盤をしっかり立てられるかは別問題です。
それぞれがそれぞれの体のスタート地点から柔軟性を高めたり、血流や機能改善するためにアーサナを鍛錬していくのがヨガの有益な取り組み方ですが、元々の骨盤の条件によっては無理に練習しない方が良いアーサナも間違いなくあります。
インストラクターはそういった個性の影響を受けやすいアーサナを、全ての受講生に向けて同じように練習させることがないように気をつけた方が良いですよね。
●骨盤自体の形状
例えば、骨盤全体の形で言うと、男性か女性かという条件だけでも、こんなにも変わってくるのです。
大きさ自体は、大柄であることが多い男性の方が骨盤自体の大きさも大きい場合が多いですが、形状は図のように全く違います。
女性は妊娠出産をする上で骨盤自体が機能的な形状となっており、高さは低く幅広です。横から見ると、仙骨(せんこつ)、尾骨(びこつ)が男性よりも後ろに出るのも特徴です。
そして女性の骨盤は、上の大骨盤(腸骨、仙骨の部分)が開いたような形に、下の小骨盤(恥骨、坐骨の部分)も高さが低く、下口が広い形をし、恥骨下角も女性の方が大きいです。
性差だけでも基本が違いますから、ここにそれぞれの個性的な要因がプラスされるとさらにその違いは広がります。
●頸体角の違い
また、頸体角の角度も股関節の得意な可動域に大きく影響します。
頸体角については以前にこちらの記事でも取り上げたように、人体が二足歩行を安定させるための股関節の構造であり、両脚で体幹部を支える機能的な角度です。
これは赤ちゃんが大人へと成長する過程で角度が変化し、より重量のある体を安定させることが可能になります。この角度は成人で、通常125~130度程度と言われていますが、この角度の違い、そして大腿骨頸部軸の方向(内よりか外よりか)などによって、股関節の稼働範囲や開く方向の得手不得手が感覚として大きく変わってきます。
■アライメントも一定の範囲内で調整が必要
そういった様々な要因を考慮すると、人それぞれ目指すべきアーサナの完成形は変わってきますよね。
インストラクターはその個人差を考慮した上で適切なガイドをするスキルが求められますが、やみくもに強度を緩めればいいというわけではもちろんありません。アーサナ本来の意味や目的を損なわない範囲で調整する必要があります。
例えば、ヴィラバトラーサナ1やランジのとき、足の位置を一直線上に揃えることを推奨している場合もありますが、特に女性の場合は骨盤が横に広い分、そのアライメントだと少し窮屈に感じる場合が多いかもしれません。(私は、それだととても股関節がつまる感じ、あるんですよね〜)
なので、窮屈に感じながら呼吸を深められないアーサナをキープするより、一直線上ではなく少し幅を取ってアーサナをとった方がいいと思います。ですがその場合も、骨盤幅より広くならないように注意しましょう。なぜなら、骨盤幅より広くなってしまうと安定感が損なわれ、このアーサナに必要な脚力が養われにくくなるからです。
また、後ろ脚の方の骨盤が開き気味になりやすいと思いますが、ここで大切なのは骨盤を正面に向けようとする意識です。
必ずしもバッチリ正面に向ける必要はなく、正面に向けようとする力の使い方、方向性がこのアーサナの効果を得るためのポイントです。つまり、
・足は骨盤幅よりは広くなりすぎないように
・骨盤を正面に向けようとする(後ろ脚を強く使う)
という内容を伝えるガイドが必要になるということですね。
■安全で正しく運動することで心身の調整を目指す
以上のように、骨盤の大きさや形ひとつとっても個人差が大きい人体。
それぞれの条件の違いが想像できるように知識を持っておくことは、老若男女に向けて適切な指導をしていくために必ず役立つことでしょう。
そしてアライメントに縛られることなく、アーサナの意味を理解し、適切な運動経験を体に与えることで骨盤内の血流改善や、機能の維持・向上に役立つという理解のもと、有益なヨガを提供できるように心がけていきたいですね。
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芸術大学卒業後、デザインの仕事に就くが、消費サイクルの短いデザイン業に疑問を感じ、30年以上のヨガ愛好者である母の影響で続けていたヨガに更に本気で向おうと決意、ヨガインストラクターに転職する。現在は3人の子育てをしながら幅広い年齢層に多様なヨガを指導。